知的障害のある子のための知能検査ガイド|主な3つ+太田ステージも紹介

子育て情報

知能検査って聞いたことはあるけど、うちの子にも必要なの?

どんな検査があるのかよくわからない。。。

知的障害のあるお子さんを育てる中で、「知能検査」という言葉に初めて触れる方も多いのではないでしょうか。

私自身、ダウン症で知的障害のある息子を育てるまで、知能検査のことはほとんど知りませんでした。

なんだか色々種類があるみたいだけど、どんな時にどんな検査をするんだろう?検査結果を聞くのは現実を突きつけられるようで怖いな、と感じていました。

しかし色々調べてくる中で、知能検査が、療育や福祉サービス、就学の判定、そして将来の支援を考えるときに役立つ大切なツールのひとつであることを学びました。

この記事では、

・知能検査の基本的な目的

・主な検査の種類と特徴

・子どもに合った検査を選ぶヒント

・検査前後に親ができること

についてできるだけわかりやすく解説していきますね。

最後に、よくある質問についてもQ &Aにまとめています。どうぞ、ゆっくりご覧くださいね。

そもそも知能検査って何のためにあるの?

知能検査は、子どもの“困りごと”や“得意なこと”を知り、適切な支援につなげるためのツールです。

私たち大人でも、「自分の得意なやり方」や「理解しやすい伝え方」があるように、子どもにも一人ひとり違った特性があります。


知能検査を行うことで、

「この子はどう理解しているのか?」

「どこでつまずきやすいのか?」

といったことが、より具体的に見えてきます。

特に知的障害のある子どもたちは、表情や行動だけでは理解の程度がわかりにくいこともあります。
そうした時に、知能検査は“今の発達の状態”を客観的に把握する助けになります。

たとえば——

・言葉での説明が伝わりにくい子の場合、
 →「視覚的なヒントがあれば理解しやすい」とわかれば、絵カードや写真を使った支援に切り替えることができます。

・数の理解が遅れている子の場合、
 →「数えるときに指を使う」「具体物を使って学ぶ」といった方法が効果的だと判断できます。

・記憶が苦手な子の場合、
 →「同じ手順を繰り返して習慣化させる」「短く区切って覚える」などの支援が向いているとわかります。

このように、検査結果から「どう支えると良いか」のヒントが見えてくるのです。

知能検査は、子どもに“できる・できない”のラベルを貼るためのものではなく、その子に合った関わり方を見つける“地図”のようなもの。

結果に一喜一憂せず、「わが子をもっと理解するチャンス」として受け止めていけたら安心ですね。

よく使われる知能検査3つ+太田ステージの特徴とは?

知的障害のある子どもに使われる知能検査は、子どもの年齢・特性・状況に応じて使い分けられています

それぞれに「対象年齢」「測定方法」「得意な評価の仕方」があり、検査を受ける目的(就学、療育手帳の取得、支援計画の作成など)によって、選ばれる検査も異なることがあります。

ここでは、よく使われる知能検査3つ+太田ステージの特徴を紹介します。

WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)

  • 対象年齢:5歳0か月〜16歳11か月
  • 特徴:言語・視覚・記憶・処理速度などを細かく分析できる
  • 活用例:得意・不得意のバランスが分かりやすく、支援計画に役立つ
  • 向いている子:ある程度の言語理解や指示への反応ができる子

田中ビネー知能検査V

  • 対象年齢:2歳〜成人まで幅広く対応
  • 特徴:年齢に応じた課題で、知能年齢やIQを算出する
  • 活用例:療育手帳や特別児童扶養手当などの申請に使われやすい
  • 向いている子:日常会話がある程度でき、課題に集中できる子

KABC-II(カウフマン式)

  • 対象年齢:2歳6か月〜18歳11か月
  • 特徴:言語に頼らない非言語的な検査が可能
  • 活用例:自閉スペクトラム症など、言葉の理解に差がある子に配慮しやすい
  • 向いている子:言葉でのやり取りが難しくても、視覚・操作で対応できる子

太田ステージ

  • 対象:発達に遅れがあり、通常の検査が難しい子ども
  • 特徴:日常の行動や関わりを観察し、6段階の発達ステージに分けて評価
  • 活用例:重度の知的障害や肢体不自由などで、一般の検査が困難なケースに対応
  • 向いている子:検査のやりとり自体が難しい場合でも、支援の手がかりが得られる

検査はそれぞれ特徴があり、「どの検査が正解」というよりも、“わが子に合った検査を選ぶ”ことが大切です。
検査を受けるときは、専門家と相談しながら、子どもに合った方法で“今の姿”をていねいに見つめていけるといいですね。

以下の表は、それぞれの検査の主に使われる場面についてまとめたものです。

評価名主に使われる場面子どもの特徴に合わせたポイント
WISC-Ⅳ・発達障害の診断補助
・学習のつまずきの分析
・特別支援教育の判定
・言葉や数の理解がある程度できる
・得意・不得意を細かく知りたい
田中ビネー・療育手帳の判定
・特別児童扶養手当の申請
・福祉サービス利用の判定
・年齢に応じた発達の目安を知りたい
・日常会話がある程度できる
KABC-II・発達障害(特にASDなど)
・言語に課題のある子の評価
・外国籍の子の評価
・言語のやりとりが苦手でも実施しやすい
・多様な認知力を評価できる
太田ステージ・発達の段階を把握したいとき
・重度の知的障害の子どもへの支援計画づくり
・検査が難しい子どもにも対応できる
・模倣、操作、関係理解などの発達段階を客観的に観察できる

ダウン症で知的障害のある息子は、療育手帳の判定で田中ビネーの検査を、在学している特別支援学校で太田ステージの検査を経験しています。前回の田中ビネーはIQ36、療育手帳B判定(中度)でした。(うちの自治体ではIQ35以下でA判定(重度)なので中度と重度のちょうど境目あたりですね。)また、直近の太田ステージは12歳で判定を受けて、stageⅢ-2後期、年齢的には3歳〜4歳前半といったところでした。

息子が在学している特別支援学校では、普段の様子や本人、家族の希望のほか、太田ステージの判定を元に支援計画を作成してくださっているようです。

どの検査がわが子に合っている?選ぶときのポイント

検査は“目的”と“わが子の特性”に合わせて選ぶことが大切です。

知能検査にはそれぞれ得意な評価方法や特徴があり、一律に「この検査が一番良い」というものではありません。
同じ子どもでも、検査を受ける「場面」や「目的」が変われば、選ばれる検査も変わることがあります。

たとえば、

・療育手帳の取得が目的の場合

・就学先を検討する時

・支援計画を立てるため など

目的によって求められる情報が違うため、検査の選び方=支援の出発点になるのです。

また、子どもの得意・不得意、検査への慣れやすさも重要なポイントです。
「ちゃんと検査を受けられるか心配…」という声は多く、無理のない方法で子どもに寄り添える検査が望ましいです。

では、どんな点を見て検査が選ばれているか、ポイント別にご紹介します:

検査の目的で選ぶ

  • 【療育手帳や手当の申請】→ 田中ビネーやWISC
  • 【支援計画や就学相談】→ WISCやKABC
  • 【診断補助や発達の状態把握】→ 太田ステージ

子どもの特性で選ぶ

  • 【言語理解が得意】→ WISC・田中ビネー
  • 【言語に不安がある】→ KABC(非言語でも対応可)
  • 【重度の障害ややりとりが難しい】→ 太田ステージで観察的に評価

子どもの年齢で選ぶ

  • 【幼児期(2〜5歳)】→ 田中ビネー、KABC、太田ステージ
  • 【学齢期(6歳以上)】→ WISC、KABC、田中ビネー
  • 【成人期以降】→ 田中ビネー(成人まで対応)

検査選びは「どれが良い・悪い」ではなく、“今の目的”と“子ども自身の姿”に合っているかが何より大切です。

気になることがあれば、受検前に心理士さんや主治医、支援機関の担当者に相談してみましょう。
親として「うちの子にとって一番無理のない方法でお願いしたい」と伝えることも、とても大事な一歩です。

知能検査を受けるときに親として知っておきたいこと

知能検査は“準備より安心”が大切。結果にとらわれず、「わが子を知るチャンス」として受け止めましょう

親としては「ちゃんと検査を受けられるかな」「うまくできなかったらどうしよう」と不安になりがちです。

でも、知能検査は“合否”や“点数の良し悪し”を測るためのものではなく、今の発達の状態を知るための手がかりです。

大切なのは、「いつも通りの子どもの姿」が見られるように、安心して検査に臨める環境を整えることです。

検査を受ける前・当日に、親として意識しておきたいポイントをいくつかご紹介します。

前もってやっておくとよいこと

  • 子どもに「テストだよ」とプレッシャーをかけず、「遊びみたいなことをするよ」など安心できる声かけを。
  • 体調がすぐれない日や疲れがたまっている時は、無理に受けずに日程変更も検討を。
  • 心配があるときは、事前に「普段の様子」「得意なこと・苦手なこと」を検査者に伝えておくとスムーズです。

検査中や検査後に気をつけたいこと

  • 検査中、親は付き添いができないことも多いですが、待合室などでリラックスして待つ姿勢が◎
  • 検査結果が出たあと、点数だけで判断せず、「どう活かしていけるか」に目を向けましょう。
  • 「うまくできなかったかも」と感じても、それも大事な情報。“その時の姿”が今の発達のヒントになります。

知能検査は、わが子の“今”を知り、未来につなげるためのもの。
親として大切なのは、「良く見せよう」と力を入れることよりも、“子どもがリラックスして自然体でいられること”。

検査当日は「特別なことをする日」ではなく、“ちょっとだけ子どもを知る日”くらいの気持ちで臨んでみてくださいね。

まとめ|知能検査は“わが子らしさ”を知るための道具

この記事では、

・知能検査の基本的な目的

・主な検査の種類と特徴

・子どもに合った検査を選ぶヒント

・検査前後に親ができること

について解説してきました。

知能検査は、「できる・できない」を決めつけるものではなく、“わが子らしさ”を深く理解するための道具です。

検査という言葉には、つい「評価される」「比べられる」といった印象がついて回ります。ですが、知的障害のある子どもたちにとっての知能検査は、“何ができていて、どんなサポートがあればもっと力を発揮できるのか”を見つけるためのツールです。

その視点をもつことで、結果に振り回されず、親として安心して向き合うことができるようになります。

私も最初は検査結果に一喜一憂していました。ですが、今後は点数にとらわれるのではなく、子どもの得意なところ苦手なところを知るツールとしてしっかり活用していきたいと思います。

知能検査は、子どもの未来を切りひらく“スタートライン”。

点数にとらわれず、今の姿をていねいに受け止めながら、未来に向けて一歩ずつ進んでいけたら良いですね。

よくある質問(Q&A)

最後に、知能検査に関するよくある質問についてまとめました。参考になる部分があれば幸いです。

知能検査って、何回も受ける必要があるんですか?

A:子どもの発達は日々変化していくため、必要に応じて繰り返し受けることがあります。
例えば、就学前・学齢期・思春期など、節目ごとに再評価することで、その時々の支援に活かすことができます。
ただし、検査の間隔を一定期間(半年〜1年程度)空けることが推奨されている場合もあるので、受検のタイミングは専門家と相談しながら決めましょう。

うちの子、人見知りで初対面の人に緊張します。ちゃんと検査できるか心配です…。

A:大丈夫です。検査者は子どもが安心できるよう、時間をかけてゆっくり関係づくりをしてくれます。
たとえスムーズに課題に取り組めなかったとしても、その様子自体が“今の姿”として評価の対象になります。
親御さんは、「うまくできなかったかも」と思っても、自分や子どもを責めないでくださいね。
大切なのは、その子らしさを知ることです。

検査の結果(IQなど)は、どのくらい重視されるんですか?

A:点数は参考のひとつですが、支援の方針は“数値だけ”で決まるわけではありません。
IQや知能年齢といった数値は、あくまで「発達の目安」のひとつ。
実際には、日常生活での様子や得意・不得意、行動の特徴なども総合的に見て判断されます。
特に、支援計画や学校選びの際には、「どんな配慮があれば力を発揮できるか」が大切にされます。

検査結果が「知的障害」と診断されるきっかけになりますか?

A:知能検査の結果は、診断の材料のひとつですが、“それだけで診断が確定する”わけではありません。
医師の診察や日常生活での様子、発達歴などを総合的に判断して診断がつけられるのが一般的です。
また、知的障害と診断されたからといって、それがすべてを決めるわけではなく、その子に合った支援や環境づくりのきっかけにもなります。
気になる場合は、主治医や支援機関と丁寧に相談して進めていきましょう。

検査を受けると、子どもが「比べられている」と感じてしまいませんか?

A:検査は“評価”ではなく、“理解”のために行うもので、子どもが傷つかないよう十分配慮されています。
検査中は、ゲームやパズルのような楽しい課題も多く、子ども自身が「テストをされている」と意識しないことも多いです。
また、検査者は子どもの気持ちに寄り添いながら進めてくれるので、親が「比べるためではなく、あなたをもっと知るためなんだよ」と伝えることが、子どもの安心につながります。

息子は、検査者さんと遊んでいるような感覚で検査に取り組めていたようです。しかし親の私の方は、別室でソワソワ。検査は楽しい雰囲気作りをしながら進めてくれているようなので、あまり不安になりすぎなくて大丈夫です。

結果に一喜一憂するのではなく、子どもを深く理解するための道具として、知能検査をうまく活用していきましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。